自由水欠乏量計算機
高ナトリウム血症の治療戦略を支える。どれだけの真水が必要か。
計算結果
真夏の熱中症や、自分ではうまく水が飲めない高齢者の脱水症。病院で血液検査をすると、ナトリウム値(Na)が異常に高くなっていることがあります(高ナトリウム血症)。これは体内の「真水(自由水)」だけが蒸発してしまい、血液が濃縮された状態です。
この時、医師は「あと◯リットルの水を点滴する必要があります」と計算します。この計算に使われるのが「自由水欠乏量(Free Water Deficit)」の式です。本記事では、生理食塩水ではダメな理由や、具体的な輸液メニューの選び方について、1000文字以上のボリュームで解説します。
1. なぜ「水」が足りないのか?
人間の体液濃度は、およそ生理食塩水(0.9% NaCl)と同じです。しかし、汗をかいたり、尿崩症で薄い尿が出たりすると、塩分よりも水分のほうが多く失われます。すると相対的に血液中の塩分濃度が濃くなります。これが高Na血症です。
2. 自由水とは?
医学的に「自由水(Free Water)」とは、「溶質(ナトリウムなど)を含まない水」のことです。
点滴製剤で言えば、「5%ブドウ糖液」がこれに当たります。生理食塩水はナトリウムを含んでいるため、高Na血症の補正には向きません(※循環虚脱がある場合は別ですが、純粋な濃度補正には自由水が必要です)。
3. 計算式のロジック
計算式は非常にシンプルです。
欠乏量 = 体重 × 補正係数 × ( (現在のNa ÷ 140) - 1 )
この式の意味は、「現在の濃い体液を、正常な140まで薄めるには、どれだけの水を足せば良いか?」という割り算です。
補正係数(0.45〜0.6)は、体の何%が水分でできているかを表します。高齢者や女性は脂肪が多く水分が少ないため、係数は低くなります。
4. 治療の落とし穴:リフィーディング症候群と脳浮腫
「よーし、足りない分を今すぐ全開で点滴だ!」というのは禁忌です。
長期間(48時間以上)かけて高Na血症になった脳細胞は、防御反応として細胞内に「イディオジェニック・オスモル」という物質を溜め込み、浸透圧を高くして水が奪われるのを防いでいます。この状態で急に外から水を入れると、脳細胞の中に水が一気に流れ込み、細胞がパンパンに膨れ上がってしまいます(脳浮腫)。これが命に関わるため、補正はゆっくり行う必要があります。
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