Hunt & Hess Grade (くも膜下出血)
SAHの重症度を評価します。
重症度評価結果
くも膜下出血の重症度を測る:Hunt & Hess(ハント・アンド・ヘス)グレードとは
くも膜下出血(SAH)は、脳動脈瘤の破裂などによって引き起こされる、極めて緊急性の高い疾患です。 発症直後の重症度を客観的に評価し、治療方針を決定するために世界中で広く用いられているのが、1968年に提案された「Hunt & Hessグレード」です。
本計算・評価ツールでは、患者さんの臨床症状に基づき、5つのステージでの評価と、重篤な全身疾患を加味した最終的なグレード判定を行うことが可能です。
1. Hunt & Hessグレードの定義と分類
この分類法では、患者の意識レベルと神経学的欠落症状の度合いによって1から5のグレードに分けられます。
- Grade 1 (軽症): 無症状、または軽微な頭痛とわずかな項部硬直(首の硬さ)のみ。予後は非常に良好です。
- Grade 2 (中等症): 強い頭痛、項部硬直はあるが、意識は清明。動眼神経麻痺などの脳神経麻痺が見られることがあります。
- Grade 3 (中等症〜重症): 意識がぼんやり(傾眠)しており、錯乱や軽度の麻痺が見られる状態です。
- Grade 4 (重症): 強い意識障害(昏迷)があり、明らかな片麻痺や自律神経障害が見られます。
- Grade 5 (最重症): 深い昏睡状態で、瀕死の様相を呈します。
高血圧、糖尿病、重度の動脈硬化、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの重篤な全身疾患を合併している場合は、臨床症状に基づくグレードに「+1」を加算して最終評価とします。
2. グレード別生存率と生存率予測
Hunt & Hessグレードは、手術後の転帰(結果)と強く相関することが知られています。
| 最終グレード | 推定生存率・転帰 | 一般的な治療方針の傾向 |
|---|---|---|
| Grade 1〜2 | 生存率 90%以上。良好な回復が見込める。 | 早期のクリッピング術やコイル塞栓術が推奨される。 |
| Grade 3 | 生存率 約80-85%。回復には時間を要する場合がある。 | 全身状態の安定を待ってからの遅延手術、または早期介入。 |
| Grade 4 | 生存率 約60-70%。重大な後遺症のリスクが高い。 | 救命を最優先とし、脳圧管理を徹底した後に手術を検討。 |
| Grade 5 | 生存率 10-20%未満。予後は極めて不良。 | 保存的加療、または生命維持のためのドレナージ術。 |
3. WFNS分類との違い
近年では、世界脳神経外科学会連盟(WFNS)が提唱した「WFNS分類」も頻繁に使用されます。 Hunt & Hessが「臨床症状の全体像」を重視するのに対し、WFNS分類は「GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)」という意識レベルのスコアを主軸に置いています。 Hunt & Hess分類は、頭痛の程度や神経麻痺といった、GCSだけでは捉えきれない繊細な変化を反映できる点が特徴です。
4. 手術適応とタイミングの判断
脳外科医は、このグレードを使用して手術のタイミングを決定します。
- 早期手術(発症後72時間以内): グレード1〜3の症例で行われることが多く、再出血を防ぐために迅速な処置が求められます。
- 待機手術(発症後2週間以降): グレード4以上の最重症例では、脳の腫れ(脳浮腫)や血管攣縮のリスクが非常に高いため、脳の状態が落ち着くのを待つ「待機戦略」が採られることがあります。
まとめ:早期発見と専門医の診察を
「バットで殴られたような」と形容される激しい頭痛は、くも膜下出血の典型的なサインです。 Hunt & Hessグレードはあくまで専門的な指標の一つですが、その数値が示す「緊急性」への理解は、患者さんの家族にとっても状況を把握する助けとなります。
免責事項:本ツールは医療関係者の学習および補助的な参照を目的としています。医師による最終的な診断や治療方針に代わるものではありません。緊急時は直ちに救急車を要請してください。