ティンパノメトリー分類計算機 (Jerger)
検査結果から中耳の状態を推測し、Jerger分類を自動判定します
ティンパノメトリー(鼓膜抵抗測定)とは?
ティンパノメトリーは、外耳道の圧力を変化させたときの鼓膜の動き(コンプライアンス)を測定する検査です。この検査により、鼓膜の奥にある「中耳(ちゅうじ)」の状態を客観的に評価することができます。通常の聴力検査(純音聴力検査)が本人の応答を必要とする「主観的検査」であるのに対し、ティンパノメトリーは機械が自動的に測定する「客観的検査」であり、乳幼児や意思疎通が難しい方の診断にも非常に有用です。
検査の目的とわかること
この検査の主な目的は、中耳に液体が溜まっていないか(滲出性中耳炎)、鼓膜が正常に動いているか、耳小骨(音を伝える骨)に異常がないかを確認することです。検査結果は「ティンパノグラム」というグラフで表示され、その形によって「Jerger(ジャージャー)分類」と呼ばれるタイプに分けられます。
Jerger分類の解説:各タイプが示す意味
臨床現場で最も一般的に使われているのが、Jergerによる分類です。主にA, B, Cの3つの基本型と、A型の亜型であるAs, Ad型に分けられます。
Type A(正常型)
グラフのピークが0 daPa付近(通常 -100 daPaから+50 daPaの間)にあり、高さも正常範囲内にある状態です。これは中耳の気圧が外気圧と等しく、鼓膜が柔軟に動いていることを示します。中耳機能は正常であると判断されます。
Type B(平坦型)
明らかなピークが見られず、グラフが平坦な状態です。これは鼓膜の動きが極めて悪いことを示しています。主な原因としては以下が挙げられます:
- 滲出性中耳炎:中耳に液体が溜まっている。
- 鼓膜穿孔:鼓膜に穴が開いている(この場合、外耳道の容積が大きく測定されます)。
- 耳垢栓塞:耳垢が詰まっている。
Type C(陰圧型)
ピークはありますが、その位置がマイナス側(通常 -100 daPa以下)に大きくズレている状態です。これは中耳の圧力が外気よりも低くなっている(陰圧)ことを示します。主な原因は耳管機能不全(耳と鼻をつなぐ管の通りが悪い状態)や、中耳炎の初期・回復期に見られます。
Type As(低コンプライアンス型)
ピークの位置は正常ですが、高さ(コンプライアンス)が著しく低い状態です("s"はShallow/Stiffを意味します)。鼓膜や耳小骨の動きが硬くなっていることを示唆し、耳硬化症や鼓膜の石灰化などが疑われます。
Type Ad(高コンプライアンス型)
ピークの位置は正常ですが、高さが非常に高い、あるいはグラフが振り切れてしまう状態です("d"はDeep/Discontinuousを意味します)。鼓膜が極端に薄くなっている場合や、耳小骨離断(耳小骨のつながりが外れている)の際に多く見られます。
ティンパノメトリーの結果に影響を与える要因
注意点:ティンパノメトリーの結果だけで病名を確定することはできません。耳鼻咽喉科専門医は、顕微鏡による鼓膜所見、純音聴力検査の結果、そして患者さんの症状(耳閉感、難聴、痛みなど)を総合的に判断して診断を下します。
例えば、Type Bであっても、外耳道の容積(Ear Canal Volume)が正常であれば滲出性中耳炎が強く疑われますが、容積が異常に大きければ鼓膜穿孔やチューブ留置の状態が考えられます。このように、グラフの形以外の数値も重要な診断材料となります。
よくある質問 (FAQ)
Q. 検査は痛いですか?
A. 痛みはありません。耳の穴を柔らかいゴムのチップで密閉し、数秒間「ポー」という音を聞きながら圧力がかかるのを感じるだけです。数秒で終わる簡単な検査です。
Q. 子供が泣いても検査できますか?
A. 激しく泣いたり動いたりすると正確な測定ができない場合があります。しかし、一瞬でも静止できれば測定可能なため、熟練したスタッフがいれば乳幼児でも比較的容易に実施できる検査です。
Q. 滲出性中耳炎と言われましたが、治るとType Aに戻りますか?
A. はい、中耳の貯留液が消失し、耳管の機能が改善すれば、グラフはType BやCから正常なType Aへと戻っていきます。経過観察の指標として非常に重要です。
まとめ:自分の耳の状態を知る第一歩
ティンパノメトリーは、目に見えない鼓膜の奥の状態を可視化してくれる優れた検査です。耳閉感(耳が詰まった感じ)がある、自分の声が響く、子供の聞き返しが多いといった症状がある場合は、この検査を受けることで原因が明確になることが多いです。この計算機での判定はあくまで一般的な目安ですので、結果に不安がある場合は必ず耳鼻咽喉科を受診し、専門医の診察を受けてください。